富山県の獅子舞形態と分布

《序 文》
 富山県は非常に獅子舞の多い所です。春は雪解けとともに始まる農作業での豊作を祈念して秋は五穀豊穣に感謝して賑やかな獅子が家々を廻ります。

 

《概 説》
 富山県では春祭りか秋祭りに獅子舞が演じられます。これらの獅子舞は江戸時代の末期頃から広 まったもので、明治時代に入ると隅々の村々まで庶民の芸能として浸透しました。県内には、休止中のものも含めると約千二百もの獅子舞があると言わ れています。
 富山県の獅子舞は大きく分けて百足(むかで)獅子と二人立ち獅子に分類されます。百足獅子は 「カヤ」と呼ばれる胴幕(どうまく)の中に人が何人も入って行われ、県西部地方で多くみられます。一方、二人立ち獅子は、二人で行われ、県東部地 方で多くみられます。それぞれのタイプをその形態や演目などで分けると左の表のように分類することができます。この他県内では、中世から の流れを汲む行道(ぎょうどう)獅子という古い形態の獅子も見られ、バラエティに富んだ獅子舞文化が継承されています。

 

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「砺波獅子」
 百足獅子で、胴幕の中に竹の輪が入る。獅子あやしは子供で、棒・長刀(なぎなた)・太刀などの 武具を持つ。(となみじし)

 

 

 

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「氷見獅子」
 百足獅子で、胴幕の中には竹の輪が入らない。獅子の相手は鳥兜(とりかぶと)をかぶった天狗 で、獅子舞棒を持って激しく舞う。(ひみじし)

 

 

 

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「射水獅子」
 百足獅子で、胴幕の中には竹の輪が入らない。獅子あやしの採り物が多様で、武具を持つものや、 花笠をかぶりキリコを持つものなどがある。(いみずじし)

 

 

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「金蔵獅子」
 二人立ち獅子で、雌雄二頭の組になって行われる。獅子あやしは子供が行い、採り物が多用であ る。(きんぞうじし)

 

 

 

 


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「下新川獅子」
 二人立ち獅子で、一頭で行われる。太いタスキをかけた八名から十六 名もの大勢の天狗が獅子あやしとなり、傘や酒樽の採り物を用いる。(しもにいかわじし)

 

 


砺波獅子の特徴
 砺波獅子は砺波平野一帯に分布している獅子舞で、竹の輪で膨らませた胴幕が重厚勇壮な印象を与える大型の百足獅子です。胴幕の中に五、六人が入って行われ、六人の場合、頭と尾を除く四人が一人一本ずつ竹の輪を両手で支えて舞います。獅子 あやしは、「シシドリ」「シシトリ」などと呼ばれ、棒・長刀・太刀・鎖鎌などの採り物を持った小学生が二人一組でリズミカルに演じます。
 砺波獅子は演目によって「にらみ獅子」と「踊り獅子」の二つに区別することができます。にらみ 獅子は、武器を持って獅子に立ち向かうもので、加賀獅子の影響を受けたと思われます。しかし、加賀獅子では胴は動きませんが、砺波獅子の場合は胴 もシシドリと一緒になって舞う点が異なります。一方、踊り獅子は、ケン・ハケ・御幣などを持って獅子とたわむれるように舞うもので、氷見 獅子の影響によると思われますが、氷見獅子のような獅子殺しの所作は見られません。


にらみ獅子(加賀獅子の影響)
《演 目》
サンパサ(サンバソウ) ニラミ サンピス ボウ ナギナタ カタナ カマ(クサリガマ) ケン ユミ オオギ(センス) テヌグイ カサオドリ カラカサ  キリコ タイコノバイ ササラ ハケサイハイ ノリジン


踊り獅子(氷見獅子の影響)
《演 目》
ヒトアシ フタアシ バンガヤシ キョウブリ ヤツブシ ギオンブリ ヨシサキ イソブリ シシコロシ

 

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獅子あやし(シシドリ)
 獅子あやしは「シシドリ」と呼ばれる小学生の子供が二人一組で行います。砺波獅子では、着物と袴姿で模様を描いた胸当てを付け、白鉢巻 を後ろに大きく垂らしたり、ふさふさとした長い白毛のシャグマ(毛冠=もうかん)を被ったりします。顔は白粉と頬紅で化粧します。

 

採り物
 シシドリの採り物には棒・長刀・太刀・鎖鎌・弓・扇などを使います。

 

 

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胴幕(カヤ)
 麻か木綿の生地に手描きの唐獅子模様などが大きく描かれ、竹製の輪が通されることで丸く膨 らみます。

 

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